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第98話 世界へ向かう扉

Author: marimo
last update publish date: 2026-08-20 20:57:08

 東条健一郎がプロデュースする予定の、国際共同制作映画の話がまとまった。

 久遠ひかるの名は、すでに国内だけのものではなくなっていた。

 公開ロケの動画をきっかけに、彼女の演技は海外の映画関係者や批評家の目にも留まり、「感情を支配する女優」として高く評価されている。いくつかの海外映画祭関係者からも問い合わせが入り、配信プラットフォームが権利に興味を示すなど、当初から水面下で進んでいた国際共同制作の計画は、一気に現実味を帯びた。

 そして正式に――共同で映画を製作しようという動きが決まったのだった。

 その知らせを受けても、ひかるはすぐには実感できなかった。

 かつては、ただ目の前の仕事を一つずつこなすことだけを考えていた。

 何度も傷つき、それでも演じ続けてきた。

 だからこそ、ここまで来たことが嬉しい。

 けれど同時に、胸の奥には別の感情もあった。

(……本当に、私がここまで来たの?)

 嬉しさと戸惑い。

 期待と不安。

 そして、これまで支えてくれた人たちへの感謝。

 様々な感情が入り混じり、簡単には言葉にできなかった。

 ひかるは久しぶりに東条健一郎の事務所に呼ばれていた。

 
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